似太郎

ポケットいっぱいの涙の似太郎のレビュー・感想・評価

ポケットいっぱいの涙(1993年製作の映画)
4.6
ここまで貧困層(スラム)の黒人たちの実態を赤裸々に描破したギャング映画は観たことがない。黒人監督、ヒューズ兄弟の実質的デビュー作にして問題作。全編に渡ってストリートギャングによる血と暴力の連鎖が描かれる。

とにかくアクション演出がキレキレで目を覆いたくなるようなバイオレンス&セックス描写が容赦なくぶっきら棒に続く。一切の綺麗事にツバを吐いたような露悪的映像の嵐なのである。これにはたまげた。(というか、ビビった)

かつて黒人俳優は所詮【添え物】としてしか扱って来なかった通俗ハリウッド映画と比較してみれば違いは一目瞭然であり、徹底してリアルなアフロ・アメリカンが縦横無尽に動き回り民間人を殺しまくるハードな内容。ギャングスタ系のラッパー達に人気があるのも頷ける。全編、ドス黒い呻きが聞こえてくるようである。

不条理かつ殺伐としたラストなどはルイス・ブニュエルの『忘れられた人々』の不良少年達のアイロニカルな顛末を思い起こす。やはりいつ観ても暴力的&破壊的な熱をヒシヒシと感じる90年代ブラック・ムービーの傑作。
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