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アマデウス ディレクターズ・カットのPのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

思いついたままにつらつら。。。

凡人(と言っても平民から宮廷音楽家になる秀才)のサリエリが大天才である後輩モーツァルトに対する羨望・嫉妬・憎しみ・敬意の入り混じった感情を回顧する。凡人で常識人のサリエリと天才で浮世離れしたモーツァルトは(表面的にはともかく)心は決して通い合っていなかったが、最期(モーツァルトの死ぬ間際)には奇妙な情で結ばれる(そのことによってサリエリは数十年の苦しみに苛まれるわけだが)。冒頭はサリエリがモーツァルトに敗れ、妬むエピソードが続くが、しかしだからモーツァルトが勝者かと言えばそうでもない。モーツァルトが幸福だったとは(少なくともこの映画を観た限りでは)到底思えない。最期、モーツァルトは死体袋に突っ込まれたまま、その他大勢の死体と一緒の穴に埋められる。哀れな末路である。サリエリが(恐らく精神病棟の)人々に対して「神は赦す」と語りかけるわけだが、精神を病んだ彼らとモーツァルトの間にどれだけの差があったのか?

仮面舞踏会のシーンなど、あー、当時の世俗はこんな感じだったのかー、という感じ。

決して悪い人間ではないのだが才能の無いリーダー(王)、旧い価値観と保守に囚われ新しいものを受け入れようとしない取り巻き軍団、そして圧倒的な才能があるが世渡りが全くできない若者の対立。サラリーマンと一緒だな。。。

遺作「レクイエム」。モーツァルトが厳格な父に対して抱いていた畏れが父の死後のオペラから顕わになる。なんで父をそんなに恐れてたの?っていうのがよくわからなかった。

「魔笛」のメロディが発想されるシーン。生活能力がなくグダグダな生活を送るモーツァルトは、義母により妻と息子を隠匿され、叱責を受けるが、その口調からインスピレーションを受けて「魔笛」を作曲する。この曲は悪友の下町演劇の監督から作曲を依頼されたもので、〆切間際までほったらかしにしていたが、この危機的状況からポーッンと生み出されたこの曲により課題を解決する(しかもこれは結果的に後世に残る名曲となる)。神話や伝説という「高尚なもの」を主題とした作品をつまらないと切り捨ているモーツァルトは生活の全てを楽曲に反映し、それが衆目を集める。「高尚」なものに反発して世俗的なものを作ったら民衆に評価され、それが後世の世では「高尚」なもの(モーツァルトの楽曲)として評価される、という流れは、芸術の世界で繰り返されてきた歴史のようにも感じる。
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