プレコップ

ツォツィのプレコップのネタバレレビュー・内容・結末

ツォツィ(2005年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

南アフリカの「赤ちゃん泥棒」

スラムの青年であるツォツィは数々の犯罪を重ねた末に、車とともに赤ちゃんを窃盗してしまう。赤ちゃんをはじめは殺そうとするも、長く一緒にいる中で生命を大切にする、ということに気づいていく。

南アフリカに根付いてきたアパルトヘイトや格差、犯罪率の高さなどさまざまな問題は社会情勢によるものである。本作ではそういった境遇に置かれた人々に対してよく言えば希望を与える形で、悪く言えば御涙頂戴とも取れるエモーショナルな視点で人間的成長を見せている。

今作はスラム街の青年たちに理解を示している。例えば、知的な青年は「先生」と呼ばれているが、免許を取るにはお金が足りない、などといった悲惨な現状をしっかり描く。

しかし、その一方で展開に飲み込みづらさがあることも事実で、ツォツィの行動原理に無理がある場面が散見される。最も問題なのは、生命の重みを成長の中で実感し始めているはずなのに、仲間を撃ってしまうところである。緊張感の中とっさに撃ったとはいえ、即死の場所に銃弾を撃ち込むのはなぜだったのか、いまだに理解が難しい。こうしたばらつきがメッセージの説得力を損なってしまっている。
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