あんときの井上

ミスティック・リバーのあんときの井上のレビュー・感想・評価

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)
3.8
目で語る映画👀

目は口ほどに物を言うが、もしそれが悪い影響だとしたら、口より目は災いの元となる。

この映画は、言葉を発しない又はアイコンタクトするシーンが多い。それはコミュニケーションの充足を意味しない。

もしも、

ジミーがケイティの目をちゃんと見ていたら
(違和感から計画に気づけたかも?

セレステがデイヴの目をちゃんと見ていたら
(事件後一度でもいいから

ジミーがセレステの目をちゃんと見ていたら
(ちゃんと見ていたのか?

ブレンダンが聾の弟の目をちゃんと見ていたら
(手話に気を取られることなく

デイヴがサベッジの目をちゃんと見ていたら
(俯きがちだけども

警察と偽った男の目をちゃんと見ていたら
(幼い子供に何ができた?

ジミーがデイヴの目をちゃんと見ていたら
(闇夜で見えにくかったとしても

ジミーがショーンの目をちゃんと見ていたら
(いくら警察を信じれないとしても

一つでも違っていたら悲劇の連鎖は起こらなかっただろう。

だが、作中で唯一ちゃんと見ていた人物がいる。それはジミーの妻、アナベスだ。アナベスはジミーを注意深く観察し事の成り行きを静観していたからこそ、ジミーの告白に対しても全てを飲み込み冷静に讃えることができたのではなかろうか。その姿はまるで女帝に見えた。

さて、作中で一つ解せないシーンがある。それはショーンの妻がいきなり初めて電話で喋り出すシーンである(その時に初めて妻の目が画面に映る)。妻の背景や心情の変化が解りづらいため、謎が残った。少なくとも、ショーンと妻が再会し、互いの目をちゃんと見ていたら、それは私の中でちゃんと整合性がとれていたのに...

映画の最後に、ジミーはサングラスをかける。ちゃんと見ることやちゃんと見られることを止めるかのように...

余談だが、ショーン・ペンは実生活でも娘を溺愛してる気がする。
あんときの井上

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