Sung

市川崑物語のSungのレビュー・感想・評価

市川崑物語(2006年製作の映画)
3.6
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話があって当たり前
目の前にいる この人は
”僕のオリジナル”
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打ちのめされた。僕自身の内なる完璧の思想や信仰や意志の裏側から外へまっすぐに貫かれた。

「性」的。エロティシズムとは少し違う。
僕も以前観た他作品のレビューの通りそこだ、と大いに首肯いた。
僕が好く一番の要因。この魅力を言わしめたいと毎回思いながら感想を書く。
僕はまだ半分も市川崑の作品に出会ってないけれど、本当に「出会ってしまった」と思ってる。
少なくはあるけれど、僕は偶然にも監督の様々な時代の作品を掻い摘むように観てきたんだとわかった。

僕はぼんぼんではないけれど、彼と同じく女に囲まれて育ってきた。生来の性質も相まって、同性で同志と呼べる人付き合いが驚くほどなく、異性の場合もやはり取っ払えない壁があり超え方を下手して欲に流され挙動不審となり、いわゆる「友だち」から同志という丁度良いところに着地できず拗らせた挙句終わる。
市川崑における和田夏十の存在がどれ程のものだったか、といってもちっとも知り得る心なんか持ったこともないけれど、少なくとも「同志を超えない相思相愛」だったということを思ってしまった。超えないというか超えずにいたんだ。
だから僕は信じられない気持ちになってしまった。わけがわからないくらい羨ましいと思ってしまった。
高望みかもしれないけれど本当に羨ましいよ。
僕だって出逢いかけはしたんだ。

多作だけど可能な限りの全てを知ろうと改めて決心した。
今までどんなに好きな作品にも感じてきた表現と人との不釣り合いが嘘のように解消される。閉じこもった作品には悪い甘さとずるさがある。本当に見事に貫かれ、更に更に自分を恥じる。
市川崑は生を終えるまで和田夏十と共に潔白な青年だった。
Sung

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