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トラスト・ミーの一人旅のレビュー・感想・評価

トラスト・ミー(1990年製作の映画)
5.0
ハル・ハートリー監督作。

ニューヨーク・インデペンデント界の重要人物:ハル・ハートリーが『アンビリーバブル・トゥルース』(89)の翌年に撮り上げた長編第二作目で、社会からはみ出した男女の風変りな恋の行方をハートリーらしいタッチで映し出しています。

16歳で妊娠し高校を中退した少女:マリアとテレビ嫌いな機械オタク青年:マシューの偶然の出逢いと風変りな恋模様を綴った恋愛ドラマで、マリアと彼女の自宅に居候するようになったマシューが親からの横槍によって邪魔されながらもお互いの愛情を確認し合っていくまでの過程をオフビートなユーモアに包んで描いていきます。

お互いに激しく惹かれ合う男女の恋物語ではなく、“何を思っているのか良く分からない”―掴みどころのない男女の奇妙な恋愛劇はまさしくハートリーらしい作風となっていて、男女の恋愛においてはお互いの“フィーリング”が合致することが何より大切であることを仄めかしています。

派手な化粧姿から真面目そうな眼鏡女子へと容貌を変えるマリアと、いつも手榴弾を持ち歩いているTV嫌いなマシューという主人公男女の風変りなキャラクターは勿論のこと、娘を結婚させたくないがゆえに残酷な罠を仕掛けるマリアの毒母や息子を暴力で支配下に置くマシューの毒父も強烈な存在感を放っています。

世間に馴染めないはみ出し者の若い男女の恋らしき感情の芽生えと変転とその後を感傷的な演出を極端に抑えた独特のタッチで綴っていく、ハル・ハートリー監督&脚本作品で、信号機を背後に佇む少女のラストショットが鮮烈な印象を残しています。
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