にしや

ひかりごけのにしやのレビュー・感想・評価

ひかりごけ(1992年製作の映画)
3.8
難破船で漂流した船員が生き残るために食人をした…という実話を元にした話。ただ、後でwikiなど見てると実話とは結構違うらしく、そこが大分モニョモニョした。
でも役者の演技がとにかくすごくて圧倒されたので映画としてはすげーと思った。皆芸達者すぎる…。特に船長役の三國連太郎の演技がエグイ。なんちゅう表情するんだ。ラストの「もっと、私を見てください!!」の叫びとかすっげー怖かった。

はじめて肉を食べるシーン、生理的嫌悪からぶるぶる震えて雪を詰め込んで口を押えてなんとか咀嚼する西川と、この世のものとは思えない感情の読めない目でがつがつ食べる船長の画がめっちゃくちゃ怖かった。この対比えぐい。西川の心情が伝わってくるようでこっちもぞわぞわしたし気分悪くなった。すごい。よくこんな演技できるな…。
事故って?西川を殺してしまったシーンの船長の叫び声にもビクッとした。すげー演技するな…語彙力がなくてこれしか言えないけどマジですごい演技。

あと田中邦衛がめちゃめちゃいい味出してた。この人めっちゃくちゃ演技上手いなー!方言がめちゃ上手い。遭難して夢うつつの中で見た故郷の回想シーンがすごく胸に来た。アザラシ鍋の話してるシーンみて、(「ゴールデンカムイ」のアシリパさんみたいにキラキラしながら食事の話するな…)ってなった。肉は刻んで鍋に入れて~脳みそが美味い~とか言ってたからどうしてもアシリパさん…ってなった。

あとは裁判長役の笠智衆の演技。彼が若い頃に老人に扮して演じた「東京物語」の役と全く変わらない老人になっていて、過去作での演技の作りこみの凄さが伝わってきて、それに驚いた。すごい役者だ…。

以前、似たようなシチュエーションの映画で「生きてこそ」という海外映画を見た時もしばらく肉を見る度に思い出してうええ…ってなったけど、本作はもっと底知れないえぐさがあったな…。

終盤の裁判のシーンはちょっと微妙かなーと思ったけど、船長の底知れなさにゾワゾワしっぱなだったのでまぁいいかな。
ちょっと前に黒澤明の「醜聞」を見たので(法廷の人たち、マジで鶏冠頭だ…)ってなった。
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