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夏の庭 The Friendsのtheocatsのレビュー・感想・評価

夏の庭 The Friends(1994年製作の映画)
4.0
難解さがなく程々の相米監督節が奏功。良作

メイキングを見れば子供たちに対してかなり細かい演技指導。こうしなさいと押し付けるのではなくあくまで子供たちに考えさせ自然さを引き出す演出。
崩れ落ちそうな古い家屋はそのように汚し演出を施し、草ボーボーの庭はいったん更地にした後草を全面に植え込み、大きな欠け込みのあるブロック塀も新しい塀を建てた後にわざと壊したりと、相当な手間とお金をかけているのが理解できる。
それらは他の作品メイキングでも窺い知ることのできる相米監督流。

そういった経緯を知ってなお相米作品はなかなか肌が合わず、芳しい印象を持つことが少ないが、本作「夏の庭」は非常にわかりやすく素直に共感できるものでした。

原作ありきということで大きくストーリーを外れることなく、相米ファンタジーは細かい部分に止まったのが個人的に良好に作用。

見始めからしばらくは訝りながらの様子見でしたが、三国廉太郎老人が子供たちを受け入れ、庭草むしり、家屋整備と見違えるようにきれいになる過程はこちらも清新な気分に。
戦争での一家皆殺しの辛い体験談や、別れた奥さんとその孫とのエピソードなどが物語に深い陰影をもたらす。
そしてラストエピソードによって子供たちが当初、老人に対して興味を抱き近づくに至った「死」の問題を直接肌で感じることになる場面は普遍的な共感を呼び起こす。


総評四つ星 いい作品でした。

022007
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