ボブおじさん

御法度のボブおじさんのレビュー・感想・評価

御法度(1999年製作の映画)
3.5
日本を代表する映画監督であり、その大胆な表現手法で世界的にも評価されていた大島渚監督最後の作品。

「戦場のメリークリスマス」以来となる監督・大島渚、役者・ビートたけし、音楽・坂本龍一のトリオが復活したことでも話題となった。

大島渚らしい様式美溢れる映像だが、個人的には、決して台詞回しが上手いとは言えないビートたけしを語り部にし、独り言まで言わせた演出は失敗だったと思う。

誰もが知る新撰組を題材に同性愛・少年愛を描いた異色時代劇。厳しい戒律によって結束を固めてきた新撰組に入隊した美少年の出現によって、隊士たちが禁断の欲望をそそられ、集団に乱れが生じていくさまを、緊迫感みなぎる映像美を通してスリリングに描いていく。

隊士を惑わす美剣士役には、故・松田優作の長男で新人の松田龍平を大抜擢。今では髭面の謎のおじさん役も多い松田だが、この頃は幼さの残る美少年。

時代劇であり、恋愛映画であり、ミステリーでもあり様々な解釈を可能にする複雑な構成になっている。匂い立つような男の殺気と色気、愛と闘いをドラマティックに美しく描きあげている。

ちなみに「御法度」とは禁じられていること、つまりタブーを意味する言葉だが、思えばそれは、映画界のタブーに常に挑み続けてきた大島渚本人のことを言い表しているのかもしれない。


〈余談ですが〉
改めて本作を見てみると、やはり大島渚は映画監督としての北野武に最も影響を与えた監督だったと言えると思う。

本作でも首を胴体から切り離す残虐なシーンが描かれ、その首が晒される。何より男同士のホモセクシュアリティが、あからさまに映し出される。

更には北野映画で2作しかない時代劇に両方とも出演している浅野忠信が、本作でも重要な役どころとして出演している。

もちろん北野武の「首」は、この作品の遥か前より原案があり、その頃のインタビューでは既にホモ描写についても言及しているが、「戦メリ」「御法度」の2作で長期に渡り大島の仕事ぶりを見てきた たけしは直接的・間接的に影響を受けたに違いない。

照れ屋のたけしは、その影響を大っぴらに口にはしないが、「戦メリ」の撮影秘話をオールナイトニッポンなどで当時面白おかしく披露して、監督の大島渚を思いっきりいじっていた。それは彼の愛情表現に他ならない。

既にテレビ・ラジオ・お笑いで天下を取っていたビートたけしには、大の大人が何十人も必死になって、のめり込んで作る映画の世界が面白そうに映ったのだと思う。

北野武が映画監督として成功したのは彼の才能だと思うけど、彼を映画の世界へと導いたのは、間違いなく大島渚だ。