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パブリック・エネミーズのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

パブリック・エネミーズ(2009年製作の映画)
4.0
1933年・世界恐慌時代のアメリカで、中西部を中心にその名を轟かせた実在の連続銀行強盗犯・John Dillinger(Johnny Depp)の半生を描いたクライムアクション。

《金持ちの金だけを狙い、弱者には手を出さない》独自の美学と、《派手に銀行を襲い、颯爽と去る》スタイルから、犯罪者であるにも関わらず民衆から絶大な人気を得ていたDillinger。一方で、州を跨いで犯行・脱獄を重ねた彼を《Public Enemy No.1:社会の敵筆頭》と認定し、意地でも捉えようとするFBIの攻防が描かれる。


『祇園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらはす。』

富。名声。シンジケートの後ろ盾。
一世を風靡したDillingerが《社会の敵》として認定された瞬間、全てを失い破滅への道を歩む末路に平家物語の冒頭の一節が脳裏を過ぎる。


シーンを追う毎に、捜査官側の疲弊の色もまざまざと濃くなっていく。脱獄を許して以降は特に歯車が軋み出す。犯罪者を拷問して情報を吐かせようとする。不注意から一般人を誤射してしまう等、FBI捜査官達の執念が狂気の色を孕む。そんな正義と狂気の狭間でもがく様をChristian Baleが見事に表現している。


"死に様も生き様"

Dillingerが最期に観た映画のセリフ通り、《男の美学》が強く描かれている。

世界恐慌の渦中。自殺率が急増した生き難い時代を生きた人間の、静かな声の中に隠れた激しい感情の動態に鳥肌が立つ。