モカ

彼女の名はサビーヌのモカのレビュー・感想・評価

彼女の名はサビーヌ(2007年製作の映画)
4.0
若く美しく、繊細さとエネルギーを持ち合わせた最愛の妹。
車の窓を開けて風を気持ちよさそうにあびるサビーヌ。初めてのアメリカ旅行でおおはしゃぎのサビーヌ。

スポーツ刈りで肥満体型、睨むような視線で見つめてくる妹。
口を開けたままよだれを垂らし、何度も何度も同じ質問をするサビーヌ。
奇声を上げ自分の手に噛み付くサビーヌ。

5年にわたる精神科での措置以来、過去とは比べ物にならないほど変わってしまった姿は、障害者が身近にいない人なら眉をひそめてしまうかも。
これほど障害者の現実をなんの脚色もなくつきつけられる映画は他になかなか見つからない。

ちょっとしたきっかけでパニックを起こし、食べ物を投げ捨てる同居人。
てんかんを持つ男性は、一日に何度も発作で倒れてしまう。
この母親に向けたインタビューで「(障害のある子を産んだことに生んだことに)一生罪悪感を持ち続ける」という答えが一番胸を打った。

当然ながら母親の責任でも、サビーヌの家族の責任でもない。

とある評論家のレビューで
5年間家族はヤブ医者を放置していたのか。この母親ではなく、監督自身に贖罪を示すべき。
というのを読んで、心の底から腹がたった。

家族だってこんなに愛らしい娘を手放したくないに決まっている。病院に入れる他に選択肢なんてなかった、その結果取り返しのつかないことになってしまった、というのが現実なのに。
意図的な感情を挟んだら、ドキュメンタリーとしての質も落ちる。

サビーヌが「私だって赤ちゃんを育てられる。叩いたりなんかしない。女の子なら名前は〜、男の子なら〜にするの」と語るシーン。

正しい診療をを受けていたのなら奪われるはずもなかったサビーヌの夢。それを思うと胸が締め付けられた。
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