モカ

最後の決闘裁判のモカのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
中世の決闘裁判ファンタジーと思いきや、現代に通じるストーリーでもあり、見終わってからも深く考えさせてくれる作品。

第1幕の視点、カルージュは不器用だけども誠実な人間。恩人のル・グリは友情に篤く、共に仕えるピエール伯への忠誠心も堅い。マルグリットは政略結婚とはいえ自分への愛情は深く、深い絆で結ばれた夫婦となっている。

第2幕の視点、ル・グリはプライドが高く自信家。無能だが金と地位はあるピエールに取り入り出世する。
友人のカルージュは軽率で愚鈍な男、マルグリットのような美しい妻がいることが許せず、夫婦仲を疑っている。

第3幕の視点、マルグリットは他の女性と同様に何の権利もなく、意に沿わない政略結婚をさせられる。夫のカルージュは短絡的でプライドだけは高く、自分に息子を産むことだけを強要する。
またル・グリの色欲と欲しいものは手に入れないと済まない強欲さも見抜いている。

カルージュの自分勝手な思い込みのヒーロー列伝から、話が進むに連れ徐々に正体が見えてきて、最後のマルグリット視点でようやく真実の目で見直せるようになる羅生門風スタイルが斬新。
また同じシーンでも演出が微妙に違うため、その差を探すのも面白い。


それにしてもマルグリットのなんと不幸なことか。
父に身売りされ子を産む道具となり、義母にいじめられ、
アホな男どもの後戻りできないプライド勝負に振り回され火炙りのリスクまで負い、
強姦された上に好色な坊主どもに身持ちが軽いのが原因と詰られ、仕事をすることを制限され、不妊の責任を押し付けられ…

考えてみると火炙り以外は、程度の差はあれど現代でもよく聞く話ではないか!と。


類まれな演技力(&美貌)でスターへの道を駆け上がるジョディ・カマーにとにかく注目。
見終わってからもずっと、ラストの彼女の表情とそのあとのマルグリットの結末を、頭の中で反芻してしまう。
モカ

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