公開当時に3Dで観て大感動して、それから定期的に序盤カーチェイスとロンドン公演を繰り返し観てた。自分の血肉になっている1本。3Dブルーレイで12年ぶりに3Dで観返した。
3Dブルーレイとしての評価がずば抜けて高く、一時期ネットで信じられないぐらい高騰していただけあって、やっぱり次元の違う深度の深さ。明らかに3Dブルーレイのレギュレーション違反レベルだと思う。背景はどこまでも深く、アクションの破片は両目が攣りそうになるぐらい飛び出てくる。
深刻さのないハチャメチャカートゥーンみたいな序盤のカーチェイスも3Dで観ると高低差や距離感が明確にわかるんで、ちゃんと身の危険を感じる映画体験となり、バカバカしいのに緊張感がずっと持続するという奇妙な感覚に陥る。デュボア警部のバカバカしさと狂気のバランスが崩れて、割とマジで怖く感じる。
ロンドン公演の複雑なレイヤー構成の画がどんどん切り替わるシーンも、立体ミスがほぼなく(把握した限り2秒ぐらいしかない)、完璧にあのドラッグ体験じみたサーカス体験を立体映像として100%楽しめる。
その他のシーンもあの手この手で3Dをおもちゃのように駆使し、キャラの実存感を高め、映画館を完全に遊園地のアトラクションに変えてやろうという気迫をじんじんに感じる。主に曲芸のスリルと死と隣り合わせ感。
被写界深度の浅い画もキャラが書き割りになってないんで、単純に望遠レンズ撮影して終わらせずにマルチリグ的なことをしている。カメラの都合や処理ミス等でキャラの立体感が失われたり、3Dの質が落ちる瞬間がひとつもない。効果はともかく質としては完璧この上ない3D映画と思う。
ただひとつ思うのが、素晴らしい立体ショットの数々が全て完璧に3D撮影前提のステージング、そして完璧に3D撮影、というようなリアル志向3Dでしかないことに不満を感じる。このトーンでフェイク志向3Dのショット(空間歪ませや部分コンバート等)も観たい。