いずぼぺ

普通の人々のいずぼぺのレビュー・感想・評価

普通の人々(1980年製作の映画)
3.7
先日、「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」で紹介されていたので気になっていた作品。

作品の中で家族の感情以外ではさほど大きな事件はおこらない。長男の死、次男の入院と家族にとって大きな事件は終わった後である。
この始まりこそが脚本の妙なのだと思う。この家族との関わりの濃度は様々だが、出てくる人物全てが「何もなかった状態」を目指している。何事もなかったかのように、夫と妻であり息子であり続けている。親戚、友人であり続けている。仕事をし、学校へ行き近所付き合いをする。薄く補修されたひび割れなど見るつもりもない。
この家族にはこの後何回か感情の大波がおしよせる。そのたびにひび割れはあらわになり、見逃すことができなくなっていく。
それぞれが自分の心のひび割れと向かい合うしかなくなっていく。

「普通」という言葉には呪いがある。根拠もなく安心したり、安全だと思いこんでしまう。孤独ではない幻想を抱いてしまう。

心のひび割れを「普通」というパテで埋めて誤魔化してきたことに気づいてしまった家族。

冷淡な母、って表現になるんだろうけど彼女の傷が一番深かったんじゃないかな。ふたりの息子を同じように愛することが出来てない自分に一番くるしんでたんじゃないかな。

74