尾道3部作で知られる大林宣彦監督が、山田太一の同名小説を映像化したファンタジック・ホラー
若い頃に死んだはずの父親と演芸館で再会した主人公。誘われるがままに付いていくと昔のままの実家に通され、同じく死んだはずの母親に迎えられる…
今まであまり観たことのない作品だったので、新鮮な気持ちで最後まで観ることができました
堅物な作家である主人公が、両親の亡霊と出会うことで愛を取り戻していく心温まる物語を軸にしながらも、しっかりしたホラー描写や展開が挟み込まれている
伏線もしっかりと最後に回収し、鑑賞後の気持ち良さは見事
地の文を読み上げるようなモノローグも、主人公が作家である設定が効いており違和感なく受け入れることができました(むしろ自分を俯瞰で見ているような冷たさが上手く表現できていたように思います。実際、愛を取り戻していく過程でモノローグは無くなっていきます)
国際劇場がホテルに建て替わってしまった話など、都市開発などで失われていく過去への郷愁を誘ってくる
「過去は取り戻せないというけれど、そんな事はない。自分の過去なのだから、好きなように取り返せば良いじゃないか」というセリフを印象的に作中で使っているところから分かるように、今作の主題は過去にどう向き合うかという点のようです
過去の亡霊に執着してしまった主人公が、迎える最後を是非とも観て欲しいです
役者陣も魅力的で、特に片岡鶴太郎の親父役、秋吉久美子の母親役は双方良い雰囲気を醸し出しており見ていて面白かったです