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異人たちとの夏のパピヨンのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
4.0
1987年に山田太一により世に送り出された小説が原作で、その翌年に大林宣彦監督により、製作公開された作品です。40才の英雄(風間杜夫)は脚本家で、妻子と別れ一人マンション暮らしです。ある日、幼い頃に住んでいた浅草に出掛けると、英雄が12才の時に交通事故で亡くなった父の英吉(片岡鶴太郎)と、母の房子(秋吉久美子)と遭遇してしまいます。両親はあの頃のままの姿で、英雄を息子として当然のごとく迎え入れます。それからは度々、父と母が暮らすアパートに通いつめるのです。玄関に下げられたレースのカーテン、ランニング姿の父が座るちゃぶ台にひぐらしの鳴き声と、ノスタルジックの洪水です。その一方で英雄は同じマンションの住人の桂(名取裕子)と恋に落ちるのですが...。
も~ういい年をして両親に甘えて、いい女と恋に落ちると言う男の願望をファンタジーの力で大林監督が叶えてくれました。原作は英語·フランス語·ドイツ語·タイ語等々、10以上の言語に翻訳されているそうです。根底にある普遍性に多くの方が魅了されると思いますし、現代人が何を得て何を失ったのか?や、人生で立ち止まることの意義を擬似体験させてくれました。
浅草の裏路地·今半のすき焼き·家庭で作るアイスクリーム...あの一夏の交流が眩いばかりです。何十年ぶりに触れてみます。
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