尿道流れ者

異人たちとの夏の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
3.2
家族や仕事仲間が離れていき、はぐれてしまった中年主人公が死んだはずの両親と出会う。ノスタルジックで感動的な親子の一夏の思い出は淡く優しく、物悲しい。両親の歳を超えてしまった主人公が年下の両親に甘えたり、一緒に遊ぶところは気恥ずかしくも微笑ましい。父親役の片岡鶴太郎は不器用だが粋で男らしく、母親役の秋吉久美子は優しさと脆さが何とも言えない。二人は何かを伝えるためにこの世に戻ってきたわけでは無く、ただ息子と会い、そばにいるだけ。それだけで優しさは伝わるし、息子も元気になる。

しかし、こういった感動的な話で終わらないところが大林宣彦のタチの悪いところで、両親との話の合間に、名取裕子との不穏な物語が挿入される。主人公と名取裕子の日常は両親との日々とは反対にとても不健康な匂いのするもので、徐々にそれはホラーへと変わる。最後には特殊メイクとチープな合成で飾られたまさに大林宣彦的結末を迎える。

秋吉久美子の健康的なエロさと名取裕子の不健康なエロさが印象的で、秋吉久美子は健康的だが、そんな母親に惹かれる主人公には不健康な願望が見え隠れしている。大林宣彦映画にはこういう母親や少女に対する性的な意識が多くある。
鬱屈した日常と夢のような非現実世界が交互するなかで、大林宣彦の女性への意識がどこか現れてるような気がする。最後に主人公に突きつけられる現実もまた象徴的で。

面白いことには面白いが、序盤のトレンディーでバブリーな雰囲気に全く口が合わず、ノリきれなかったのが残念。