ふき

MEMORIESのふきのネタバレレビュー・内容・結末

MEMORIES(1995年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1時間53分か〜なげえ〜と思いながら観始めたがあっという間に終わった。
オムニバスは個々の作品は良くてもオムニバスである意味を感じられないものも多いが、今作は作品ごとに違った楽しみがありつつ、こだわり方に一貫性があったので違和感なく楽しめた。

1話「彼女の想いで」
かなり好きだった。
物語が進むにつれどんどん引き込まれる。
手書きとは思えない緻密な描写で神が細部に宿る。音楽も音響も真に迫る。
先が読めない展開に驚いているうちに否が応でもキャラクターと同じ目線に立たされ臨場感を味わえる。
ひとつひとつの描写がそれひとつだけで作品の価値を決定付ける熱量を持つものばかりだった。
世界観が練り上げられており、技術的にもレベルの高い素晴らしい作品。最高。有難い。
ハインツが屋根から落ちたエミリーを最初は掬い上げられずに何度もホログラムをすり抜けるのに、エヴァの「エミリーはここにいるわ」という声を無視して(つまり虚構を拒否し現実を受け入れて悲しみに浸ることを選んだ)からエミリーを抱くことが出来るようになる、という描写は胸に焼き付いた。
たとえその代わりが無くとも失ったことをなかったことには出来ない。悲しみを受け入れるんだ。というエヴァの対比となるハインツの思想が、混乱の中で流れるように描かれている。
キャラクターは対立したが、物語はどちらの思想も肯定する終わり方で好きだった。何が大切かは人によるものなので、善悪二元論で語ることは難しい。
ハインツ生きててよかった〜!花びら吹くの良すぎる…からのやまなし〜!もうちょい余韻欲しかった笑
脚本・設定に今敏さんがおりエヴァに感じた既視感の正体がわかった。彼女は今敏監督作品に登場する女性を彷彿とさせる。
夢と現実を交互に行き交い、徐々にその境目が薄くなっていくところもパーフェクトブルーを思い出した。
2回観た。良かった。

2話「最臭兵器」
好きだった!
いやいやこんなん1話目良すぎてあんた、蛇足みたいになっちゃうじゃん、って思ったけど勢いあるしオリジナリティあるしあっという間に心が宇宙から山梨に移動した。
展開は読めたが、描写に引き込まれる。
兵器や戦闘機もかっこよかった。
そして1話から思っていたが人物描写がうまい。台詞は多くなくとも人物像を捉えやすく、かつ説明的でない。トンネル前の部隊長が全員退避し終えてから最後に自分が逃げるとか。こういうポジションの人に血が通っていると説得力がある。
ずっと冷静だったアメリカ軍人が最後さすがに慌てていて笑った。
信男の間抜けさと周囲の慌てようがちぐはぐでおもしろかった。

3話「大砲の街」
背景良い。出てくるガジェットのデザインや機能がいい。
話は抽象的な風刺であまり刺さらなかった。
号令中に気を抜いている同僚を小突く母や、敵のことは大人になったらわかるという父など、大きな流れに飲み込まれていく蒼茫の人生の描き方には惹かれた。
ふき

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