Laura

去年の夏 突然にのLauraのレビュー・感想・評価

去年の夏 突然に(1959年製作の映画)
3.5
この映画を観て初めてエリザベス・テイラーの美しさが感得された気がする。彼女の本当の魅力は『陽の当たる場所』のような紋切り型の令嬢役よりも、本作のような心理的に闇を抱えた女性の役で発揮される。彼女のしっとりとして背徳的な色気は、本作の役柄と本質的にマッチしている。

映画は、ロボトミー手術と同性愛をテーマにした、テネシー・ウィリアムズ原作の不気味な話。同性愛者だった婚約者の不可解な死に立ち会ってしまったことから精神を病んだ女性(エリザベス・テイラー)と、その婚約者の母親で、息子を病的に愛していた女性(キャサリン・ヘプバーン)の心の闇が暴かれるまでを描く。本作が製作された1959年当時のハリウッドでは、倫理的な観点から同性愛を直接的に描くことは難しく、ほのめかされる程度に留められている。

ひとつの見どころは、やはりエリザベス・テイラーとキャサリン・ヘプバーンという、全く資質の異なるふたりの大女優の対照だろう。情緒不安定で陰のあるテイラーが、当人の資質にマッチした役柄でヒステリックな演技を存分に爆発させているのに対し、ヘプバーンのほうは息子に病的に執着する母親という、おそらく彼女自身と本質的にはあまり重なるところのない役柄で、やや硬直ぎみに見える。そして、そんなふたりの女性の間に立ちすくむかのような医師役のモンゴメリー・クリフト。実は彼自身、みずからの同性愛的な志向に悩んでいたと言われているが、本作では中立的な態度を崩さない役柄で、演技も控えめであり、見方によってはそれは却って苦しげにも思える。
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