けーはち

ウエスタンのけーはちのレビュー・感想・評価

ウエスタン(1968年製作の映画)
4.1
マカロニ・ウェスタンをやり尽くしたセルジオ・レオーネが米国資本の力で古き良き西部劇へのリスペクト、愛惜を込めた渾身の1作。

非情なガンマン(ヘンリー・フォンダ)が地上げのため地主一家を惨殺、式を挙げる前から未亡人となった女(クラウディア・カルディナーレ)を手籠めに。罪を着せられた賊(ジェイソン・ロバーズ)とハーモニカを吹く謎の流れ者(チャールズ・ブロンソン)が結託し──という復讐モノがベースではあるのだが、物語の背景には米大陸横断鉄道の敷設。ガンマンたちは過去の因縁により斃れ、或いは何処かへ去り、整備された鉄道と駅には労働者が集まり、その中心には女……と荒くれ男が暴力に物を言わせる開拓時代の終焉(そして西部劇の斜陽)に対してのノスタルジーを漂わせる作風。男臭さの象徴らしきブロンソンを主役に、フォンダという米国の善性の象徴みたいな俳優を女子供も殺す冷酷な殺し屋にした配役にもインパクトがある。

冒頭のシーケンスから印象的で、10分程度BGMもなく3人の無法者がキイキイ鳴る錆びた風車音と共に貯水槽から垂れる水や顔にたかるハエを払ったりしながら駅でブロンソンを待ち伏せ、ジリジリとした時間が過ぎ、列車がついた途端、交錯する銃声が一瞬で雌雄を決する、いわば「間」と「緩急」を活かした圧倒的様式美にシビれる(まあ冒頭彼が狙われる理由はワカランが……様式美っすよ)。

モリコーネの音楽は、これまた様式美的などっかで聞いたような口笛やハーモニカやホンキートンク、或いは刺激的にギョ~ンと唸る荒々しいエレキギターや、かと思うと時に白鳥の湖かと思わせるような優美で壮大な弦楽隊が鳴り、肝心な所でモリモリと感情を煽ってくれる。