アンダーシャフト

ウエスタンのアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

ウエスタン(1968年製作の映画)
4.8
「ワンス·アポン·ア·タイム·イン·ザ·ウェスト」の方が俗に言う完全版らしいが、こちらを視聴。

マカロニ·ウェスタンの見所と言えば、“撃ち合い”+“勧善懲悪”というイメージが強かった自分の浅はかさを痛切に感じた一本。

西部開拓時代。アメリカのとある町を舞台に、登場人物の過去と欲と矜持が砂塵舞う荒野に交錯する、ハードボイルドウェスタン。
ハーモニカを吹く謎のガンマン、脱走してきたと思われるならず者、結婚相手と暮らすためにはるばる西部へやってきた女、余命わずかな鉄道会社の経営者、その汚れ仕事を引き受けてきた冷酷なガンマン…それぞれの思惑が絡み合いながら、生き残りを懸けた物語が展開していきます。

とにかく絵と音楽が素晴らしい。
今なら珍しくない、高位置からの俯瞰視点による町の風景、ギリギリまで寄った人物のクローズアップショット、どれも素晴らしい。乾いた空気とヒリヒリする緊張感が自分を引き付けて離しません。

この作品のメインキャストは、みんな強くてタフ。まるでそうでなければ西部では生き残れないかのよう。
嫁いできた矢先に嫁ぎ先の家族の遺体と対面する羽目になる元娼婦の女。家族を殺した男に無理矢理抱かれても、「熱いバスタブに入れば、すべてなかったことになる」といい放つ瞳に、この女の強さとしたたかさが滲み出る。

クライマックス。
開拓による財と権力によって、腰のリボルバーに命とプライドを賭ける生き方が消えようとしていく中、居場所を無くした男2人が、決着をつけるために向かい合います。
そして、ハーモニカに込められた衝撃の事実。
ハーモニカが持つ意味を知った時、この男の不可解な行動の理由が全て明らかになります。その時のショックは、震えがくる程!!

もう、自分のレビューに収拾がつかなくなる程の、痺れる傑作です。