このレビューはネタバレを含みます
タイムトラベルというと、主人公を羨むような、ワクワクする展開が待っていることが多いが、この物語ではその能力は障害でしかない。"遺伝子異常"なのだ。
ヘンリー(主人公)は自分の意思とは関係なく、突然タイムトラベルしてしまい、何故かトラベルした先では毎回、一糸纏わぬ状態になっている。
そんなヘンリーの事情を知った上で、彼に安心感を与え、愛で包み込むクレア。
彼女は子供の頃に、30代のヘンリーと何度も会い、恋に落ち、結婚を願っていた。
未来の自分に嫉妬する(10代の)クレアの姿はなんとも愛らしかった。
ヘンリーとの結婚式、またも意思に反して消えてしまった(タイムトラベルした)ヘンリーの"替え玉"として現れた未来のヘンリーと挙式をあげるクレアには、なんとも言えない包容力があった。
すれ違うこともありつつ、幸せな生活を送っていた2人だが、ある日、胸を撃たれて息も絶え絶えな未来のヘンリーが一瞬タイムトラベルし、消えていく姿を見てしまう。
何故、いつ、ヘンリーが死ぬのかは謎のまま物語が進んでいく。
終盤にその原因が判るが、それは狩猟に出た人たちに、鹿と間違われて撃たれるという、なんとも虚しく、呆気ないものだった。
ヘンリーが死んでしまった後も、過去のヘンリーがタイムトラベルしてくるのを待ち続けるクレア。
そんなクレアに、「待つ人生は送らないで」と言って消えていく(過去の)ヘンリー。
映画の中で描かれている限りでは、ヘンリーが(彼の死後に)最後にタイムトラベルしてくるのは、娘のアルバが10歳の時、動物園。実際はいつが最後なのかは判らないが、きっと最後の時には、クレアにその事実を伝えるのだろう。
なんとも切なく、不思議な物語だった。
地下鉄内でのヘンリーとのお母さんとの会話が素敵だった。