YusukeHorimoto

アーティストのYusukeHorimotoのレビュー・感想・評価

アーティスト(2011年製作の映画)
4.5
⭕️初見

数多くの賞に輝いている現代に作られた古典サイレント映画ということで鑑賞。

素晴らしい作品でした。

まず、私はこの映画で初めてサイレント映画を観ることになったのですが、本当に凄い表現ばかりで終始ハッとさせられていました。
言葉で伝えられるのが当たり前の映像作品を観てきている世代としては、理解に苦しむのではないだろうかと思っていたが、言葉以外でも、いや、むしろ言葉がないからこその想像で、ここまで楽しめるのかと感じさせられました。

上記に付け加えて、サイレント映画に関する感想をもう一つあげておきたいのですが、ここまで音楽で心情や情景を描写できるものなのかと思わせれました。
主にクラシックやジャズによって上手に表現されていましたが、ここにも近年の音楽の聴き方“詞を聴く”ということ以外で感じられるものというのは、これ程までに数多くある、ということが見えたと思います。

映画を作り上げる大元の内容は、サイレントからトーキーへの移行期というところ。(この時代背景がまず良い)
だから、この映画はコンセプト上、サイレント映画にした方が良いということがあったわけですね。それを現代のような手法で表現しても、これほどの味は出ないということがあるのです。多くの選択肢がある上で1番良い選択をしたサイレント映画ってことですね。それも感じれる。

キャラクター設定も素敵。
サイレント映画の大スターの主人公が時代の流れによって低迷していくというのと、その大スターのファンだった一般女性がふとしたきっかけでトーキー第一世代の大女優になっていく両極端な設定。
この2人は惹かれ合っていて、すれ違いながらも、想い合っている。
劇中、映画の撮影シーンで2人で踊るシーン。演技をしているというのに、彼女と踊ることに夢中になってしまう主人公が何度もNGを出して何度も2人で踊るのは、2人の距離が急接近したことを描いていて、これほど素敵な描き方をするとはズルすぎる…と思いました。

本当に素敵なシーンばかり。
もっと語りたい。

これはマジで傑作映画でした。

《好きなシーン》

ベレニス・ベジョ演じるヒロインのぺピー・ミラーが、上記で言った2人で踊るシーンの後、主人公に会いたくて楽屋に行くが、彼はいないというシーン。ここは本当に名シーン。
部屋に入っても彼はいない。彼の背丈ほどのコートスタンドに掛かったジャケットを見つけると、歩み寄り、掛かったままのジャケットの右の袖に右腕を通す。その右手が彼女の腰に優しく触れ、彼女の左手がジャケットの右肩に触れると、まるで、抱きしめ合っているよう。見事。
YusukeHorimoto

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