戦争映画らしからぬ緩い話の構成や一切外連味のない戦闘シーンに驚かされるけれど、同時に自分もどうなるのかわからない先の見えない戦場で生きる一兵士のリアルな状況が伝わってきて『戦争=娯楽』というハリウッドの毒に自分が染まっていたことに気づかされる。ただ話の語り口がやや冗長だし、エピソードも唐突に終わるものが多いので取っつきにくいのも事実。
殺される兵隊が何の見せ場もなくあっけなく死んだり、途中女スパイが敵の兵隊を殺害する場面でも武器などをインサートしてサスペンスを盛り上げるわけでもなくワンカットであっさり処理したりと、個性的なアクション演出がフラーらしい。あと少人数の人間で戦争という舞台を作り上げてしまうところも。
実質的な主人公であるリー・マーヴィン演じる軍曹がどういう人間なのか全くわからないまま映画が終わることに困惑するが、もう一人の主役でもある物書きの青年兵士がフラー監督の若い頃をモデルにしていることがわかると軍曹は言わば製作している監督の分身でありこの作品は二人の自分が織り成す戦争ドラマであることに気づかされる。
戦争映画なのに手柄や国への想いより弱者や子供といった者たちへの視点が多く、それが「生きることの大切さ」を説くラストに集結していく展開は好み。