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さよならをもう一度のodyssのレビュー・感想・評価

さよならをもう一度(1961年製作の映画)
3.5
【現代日本でリメイクしたら・・・】

有名な映画ですが、「午前10時の映画祭」にて初めて鑑賞。原作のサガン『ブラームスはお好き』は、遠い昔に読んだので内容はほとんど覚えてません。

中年女性の、かなり年下の青年との恋が扱われていますが、この映画では最初からお互いの年齢を問うシーンが出てきます。ふつう、会話の相手の年齢を尋ねるのはあまり趣味のいいことではないと思うのですが、この映画では登場人物の年齢をはっきりさせる必要があるためでしょうか、その辺は無粋に割り切って作られているようです。

青年は25歳、ヒロイン(バーグマン)は40歳ということになっています。もっとも、ヒロインが自称した年齢が正確なのかどうかはわからない。バーグマンがこの映画に出たときは45歳だったようで、実際スクリーンを見ているとそのくらいかなという気がします。ほとんど母と息子の恋愛みたいなもの。

ヒロインは離婚後に室内デザイナーをやって自活しており、やはり離婚歴のある中年男性(イヴ・モンタン)と結婚はせずに付き合っている。しかし男のほうは適当に若い女と遊んでもいる。青年は裕福な家庭に育ち、いちおう法律事務所に勤めているもののあまり仕事熱心ではない。青年のヴァン・ダー・ベッシュという姓はオランダ系でしょうか。とにかく英国や米国も含めて国際的に人脈がある家柄のよう。

この映画では、ヒロインが青年との年齢差に苦しむのとあわせて、勤勉に仕事をしなければ生活できない彼女(といっても女中を一人使っていますけど)と、のらくらしていても生活苦に陥るわけではない青年の差みたいなものも描かれています。

ちょっと面白いと思ったのは、ふたりがコンサートを聴きに行くシーン。最初に聴いているのがブラームスの交響曲第1番。そのあと、途中休憩時間に二人でコンサート会場外の店に行って軽く飲んでいるんですね。ドイツ語圏のコンサートホールだと、建物内にアルコールも含めて飲み物を出すコーナーがあるのが普通ですが、パリではこういうふうになっているのかなと思いました。そしてコンサートホールに戻ると、すでに後半が始まっていてしかもブラームスの交響曲第3番の第3楽章が流れている。まさか後半のプログラムが交響曲の第3楽章から始まるということはないでしょうから、まともに受け取ると二人は休憩時間と交響曲の第1・2楽章の時間、一緒にいたことになる。いくら何でものんびりし過ぎでしょ、ありえねー、って感じですが、まあこの映画ではブラームスの交響曲第3番第3楽章がテーマソングみたいにしばしば出てくるから、それに合わせたシーン作りですよね。めくじらを立てているのではなく、映画の都合が優先されていると言いたいんですが。

もう一つ面白いのは、ラストが結局最初への回帰であること。何かが解決したわけでもなく、日常が戻ってきたと暗示することで作品が終わる。中年の男女は結局そこから逃れるすべはないということなのでしょうか。

余計な付け足しをすると、この映画を現代日本でリメイクしたら面白いのでは、と思いました。すぐ浮かんだ配役は、中年女性に菅野美穂さん、青年に佐藤健くん。ヒロインのパートナーである中年男性は・・・・浮かばない。誰か、これはという人がいたら教えてください。リメイクするとすると、日本はこの映画のパリのように社交が盛んではないから、別のシーンで時間を埋めないといけませんね。
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