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愛と死の記録のmitakosamaのレビュー・感想・評価

愛と死の記録(1966年製作の映画)
3.7
スカパーにて。予備知識無しに見たら思いのほか文芸作品でちょっと感動した。

戦争から20年後の広島が舞台。復興時の日本とは言え、当時の東京の映像よりも明らかに発展途上に見える。
まだ道も建物も整ってない。そんな中、広島を象徴する路面電車・川と橋が人の往来の活気を感じさせる。
戦争の爪痕がまだ深いが、それでも前に進む市民の姿が見える。
冒頭の町の景色からして、この物語がどういう物かを如実に語っているんだよね。

印刷会社に勤める青年ユキオ(渡哲也)はたまたま知り合ったレコード店の娘カズエ(バンビ)(吉永小百合)と接していき、お互いに惹かれ合う。両者の同僚であるカップル(中尾彬・浜かおる)とバイクでダブルデートしたり爽やかな青春だ。

だがユキオは体調の異変を訴えバンビに辛く当たる。被爆者であるユキオは白血病となり別れ話へと進むが、それでもバンビは一途にユキオに付き添う。
渡哲也と吉永小百合の組合せってのも珍しいが、コレが中々お似合いだ。少年っぽさが残る渡哲也だが、とにかくタッパがあるのが良いよ。さゆりちゃんと頭一つ違う。
大柄な男らしい体躯とアンバランスなベビーフェイスが、病に蝕まれる悲劇性と相まり実に切ない。
問答無用で可愛い吉永小百合の甲斐甲斐しい愛情もあり思わず涙を誘う。

しかし、だからこそ最後のバンビの選択は何とも言えない気持ちになった。愛した男の分まで生きる選択肢もあったろう。だが今作のヒロインの行動もわかる。わかりみが強いだけに何とも切ない。
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