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ビバリーヒルズ・コップのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ビバリーヒルズ・コップ(1984年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

腕利きだが、行き過ぎた行動で度々上司から怒られるデトロイト市警の刑事・アクセル。再会した幼馴染みの男が何者かに殺されてしまい、彼は休暇を取ってビバリーヒルズに行き、単独で真相究明に乗り出す。彼はお目付け役として派遣されてきた2人の地元刑事を味方につけ、アートギャラリーを隠れ蓑にした麻薬組織を叩き潰す…。

ハミ出し刑事・黒人版の元祖?
だが、その武器は腕っぷしの強さやバイオレンスではなく、人懐っこい笑顔と人を煙に巻くマシンガントーク。
コメディアン出身のエディ・マーフィーの魅力が存分に活かされた出世作であり、よくよく見ると、人種差別や格差社会を笑い飛ばす傑作である。

親友を殺した犯人を追ってビバリーヒルズにやってきたエディをサポートするのが、結果的に彼と共に悪に立ち向かうことになる地元警察の2人の刑事。
規則に縛られた2人と自由奔放なエディの刑事ぶりとの対比が面白く、彼らの存在が更にエディの魅力を際立たせる。

客観的に見れば、本作は単なるアクション・コメディであり、またはブラックプロイテーションの低予算娯楽映画かもしれない。
今では黒人が主人公の白人や全人種向けの映画は珍しくはないが、本作は黒人が主人公の全人種向けの映画で、初めて世界的な大ヒットを飛ばした記念碑的作品。
ストーリーは傑作「夜の大捜査線」と同じ骨子で、頭の切れる黒人刑事が白人の町で捜査する物語。
ただし、その刑事はエリートではなく、やや下品でスケベでもあり、しがない安月給の警官で、服装からして物凄く庶民的で親しみやすい。

その主人公はデトロイトからやって来る。
冒頭映し出されるデトロイトは、かつて自動車産業で栄え、黒人も白人も関係なく労働者が働いていた姿。
白人が幼馴染みの親友であり、差別など知らぬ街の刑事がビバリーヒルズという金持ちの白人の街に乗り込む。
同じアメリカ国内でありながら、目に見えて分かる収入格差やカルチャーギャップ、うっすらと感じられる差別をモノともせず、口八丁で捜査を進める姿が痛快だ。

最初は非協力的な白人の警官も、黒人の主人公の有能さと人柄に次第に心を開き、主人公と一緒になって犯人を挙げる。
人種を超えた友情と融和、正義を成すためには白人も黒人もない。
実は人種差別のないアメリカの理想がここにある。

そして本作は刑事モノのコメディを切り開いた作品でもある。
それまでは「ダーティハリー」のような権威に逆らうアウトローな刑事が主流。
本作が切り拓いた功績は実は大きい。

笑いだけでなく、アクションも充実。
これでもかと車を破壊する序盤のトラックチェイスは派手で、クライマックスはいつの間にか白人刑事が笑いを誘い、エディはキリリとしたガンアクションで締める。

気楽に楽しく見れて、それでいて考えさせられる作品であり、実は傑作。
いつの日にか「昔はこんな差別や格差があったなぁ…」と、単なるお気楽な娯楽映画だけの存在になるべき作品である。
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