櫻イミト

白いドレスの女の櫻イミトのレビュー・感想・評価

白いドレスの女(1981年製作の映画)
4.0
初期「スター・ウォーズ」や「レイダース/失われたアーク」(1981)の脚本家ローレンス・カスダンの監督デビュー作。官能的な描写がセンセーショナルな話題を呼んだ犯罪サスペンス。原題は「BODY HEAT:体熱」。

こぅ様からおススメ頂き鑑賞。

猛暑となったフロリダの夏。ある夜、弁護士ネッド(ウィリアム・ハート)は白いドレスを着た女性マティ(キャスリーン・夕ーナー)と出会う。その美しさに目を奪われ思わず声をかけるが、彼女は既婚者であることを告げ立去っていく。諦めきれないネッドは彼女を探し歩き、ついに再会が叶う。実は富豪の夫に苦しめられていると語るマティ。二人は熱烈な恋に落ち運命が大きく狂い始める。。。

ムーディーなサックスの劇伴が印象深い大人のサスペンスだった。名脚本家カスダンの緩急自在な演出に引き込まれ最後まで目が離せなかった。

序盤、やけに白っぽい画面に違和感を抱いたが後に本作のジャンルを示すための演出的布石だとわかる。しばらくはその仕掛けに気付かず危険な不倫サスペンスとして観ていたのが、中盤に話が急展開しフロリダの夏の夜が白い霧で染められた瞬間に膝を打った。本作はフィルム・ノワールだったのだ。

振り返れば、本作がデビューとなるキャスリーン・夕ーナーの登場時に既視感があった。それはファム・ファタルの象徴的女優ローレン・バコールの影だった。そして後半が進むにつれプロットが「深夜の告白」(1944)をなぞっていることに気付きはじめ、答え合わせをしつつ終盤を迎えた。同作を知らなければ新鮮に、知っている自分にとっては物語の解き明かしと並行してなされるジャンルの解き明かしをマニアックに楽しむことができた。

フィルム・ノワールを大幅にアップデートした、単なるリメイクを超える一本だった。公開当時はその引用を安易と取り批判する向きもあったようだが、時代によって批評や評価は変わるもの。古い批評に囚われず感性のアップデートを心がけたいと促される鑑賞になった。車の窓硝子に映る人の姿の鮮やかさにモノクロではなくカラーならではの影の使い方を学んだ。

※脇役で出演した駆け出し時代のミッキー・ロークが本作で一躍注目を浴びることになった。

※終盤の卒業アルバムの使い方は、「氷の微笑」(1992)のモニター画面を連想した。おそらく同作が引用したのだと思う。
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