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アニマル・ハウスのmasatのレビュー・感想・評価

アニマル・ハウス(1978年製作の映画)
3.9
こんなに面白い作品だったのか!
『シュロック』(71)から『ケンタッキー・フライド・ムービー』(77)を経て、本作へ・・・
ジョン・ランディスが、70年代に飛ばしていたのが解る。しかも、78年は、二大ヴェトナム内省映画がアメリカン・ニューシネマ最終第三期の雄叫びを挙げ、片やスーパーマンが空を飛んだ年である。そんな混沌としたパワー溢れる時代の潮流の中で、高らかに“馬鹿”を謳い上げたランディスは偉い、いや超人的であった。

男子寮VS女子寮ならぬ、優等生寮VS落ちこぼれ寮、いや、落伍者寮、いや、社会不適合者寮とでも言おうか。

目を見張った。その不意打ちの驚きは、そんなおバカ満載のごった煮コント集が空中分解することなく、しっかりと“青春”を謳い上げるところにある。アメリカン“若者のすべて”が、60年代を背景としながらも、78年の空気を炙り出しているところが凄い。ランディスは自らの視点で、時代を映す事に大成功していた。

落ちこぼれ寮が、最後に威信をかけて挑む闘い。その時、唯一人、全編通して素性の解らないヘルスエンジェルス野郎が、
「戦争はまだ終わっていないー!」
と叫び、それを合図に出撃する馬鹿ども。
公開された78年、彼の地の戦争が終わって、まだ3年弱。帰還兵がごった返し、後遺症人間が溢れかえっているアメリカは、まさに人間性の混迷の中、内省一色の時だ。
また、この落ちこぼれ寮の連中は、この映画の舞台が60年代という事から察するに、おそらく数年後に彼の地の戦争へと向かう初期出撃組になる奴らだろう。
そんなこんなが混ざり合ってのクライマックスの大団円、体制撃沈作戦は、感動的ですらある。

その特攻大作戦の合間に、そんな愛すべきアホどもの“その後”がテロップ・インサートされる。

例えば、優等生寮の奴は、卒業した後に、ウォーターゲート事件に関わり、刑務所に入れられ、そこでカマを掘られてしまう。大狂乱のジョン・ベルーシは、ドサクサに紛れてチア“ヤリマン”ガールを拉致り、後に上院議員となった。彼女も議員夫人となった(何という皮肉、いや、一周してハッピーエンドだろう。こんな奴が議会入りした方が、この頃のアメリカは幸せになったのだ)。
ヘルスエンジェルス野郎は“行方不明”。

こんなそれぞれの奴らの“その後”が、感動をより高め、涙するのではないか!?という興奮の中、アホ映画が立派な青春グラフィティーとして、幕を閉じるのであった。

見たかルーカス、見事なウラ・アメリカン・グラフィティだぜ、まったく。
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