あ

暗黒街の弾痕のあのレビュー・感想・評価

暗黒街の弾痕(1937年製作の映画)
5.0
時計の横に置いてある恵比寿様がシュールでした。美術のセンスよ笑

カエルが飛び込んで揺れる水面に並ぶ二人からして既に心中の危うさがあってスリリングですが、その後のあまりにもシンプルでスピード感全開の展開には度肝を抜かれました。

脱獄の、手元と目線の駆け引きも印象的でしたが、霧の中で釈放を訴える牧師と空いた扉がラストの国境を塞ぐ森に帰結する絶望感が、前科者の負のスパイラルの行末をこれでもかというほど効果的に表していました。

この時代のフィルムノワールには、アメリカンニューシネマ的なラストを迎える作品が多いですが、圧倒的に違うところはその目線の低さでしょう。レイにしろ、破滅する主人公をハードボイルドなヒーローとして崇めるのではなく、より時代の被害者として主人公を描くことで、社会の根源的な悪を暴くことに徹しているような気がします。

それは正に生まれつき悪に染まる運命だった人間をどうして責められるのか、自分で選んだ道でもないのに、という問いを常に持っていたからではないかと思います。
あ