後天的にヘレン・ケラーのようになったおばちゃんが、誰も当事者たちの世界を爆速で切り開くのが面白かったです。だからこそ、そこに絞ってもう少しおばちゃんのハンドマジックを観たかったですが。
放置子がラジオを持って初めて音(というよりも、目が見えない分「振動=波」という感じでもっと本質的な捉え方をするんでしょうが)を知った瞬間、あの世界が広がる瞬間を撮れた時点でもう勝ちだと思います。
一方で、白い雪に触れて「雪だ」と言って以来口を閉ざした男性を見ると、本当障害者に限った話ではないですが、然るべき時間があるかと、然るべき人に出会えるかという問題の大きさがしみじみと伝わってきます。「コックファイター」で意図的に口を閉ざしたウォーレン・オーツとは訳が違いますからね。
最後その男性が枝にぶつかって幹をなぞったところで終わらせたのも最高でした。
「人に触れられるのが怖くて、長い時間を無駄にしました。」
「手が離れると、途端にその人が1000キロ?も離れてしまう気がするのです。」
「世界のどこかで戦争が起きても、私は気づかないでしょう。」
考え抜いた人間の言葉ですね。単なるワードセンスという言葉に収まらないものがあって考えさせられました。