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アメリカン・ヒストリーXのkoheiのレビュー・感想・評価

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)
4.7
《我々は敵ではなく友人である》

大傑作。『フルメタルジャケット』と同日に見たので、1日に2本も心を震わせられる映画に出会って、軽くパニック。


白人至上主義に傾倒するダニーの元に、兄デレクが三年ぶりに帰ってくる。デレクは三年間、黒人の車泥棒を殺した罪で服役していたのだ。兄を神のように慕い兄と同じく白人至上主義に身を染めたダニーは、兄の帰宅に喜びを隠せない。しかし、三年ぶりに会うデレクは、以前とはまるで別人のように穏やかで公平な人間になっていた。
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直近で言うと『怒り』を観た時とほとんど同じ心境、余韻に浸っている。分かりやすく、重く、根は深い社会派ドラマが好きみたい。

「刑務所で何があったのか?」という問いを観るものに抱かせたまま前半はその吸引力で飽きさせず、この問いへの解答が物語の後半になって初めて明かされる。この解答も説得力があり面白かった。終始緊張感が保たれ、満足感に溢れる映画だった。

モノクロで描かれる過去は、白と黒でしか判別できず肌の色を意識させるが、僕にとっては逆説的に、色の関係ない純粋な世界が描かれていたように見えた。色の見えない中で色を意識するデレクは野暮に見え、そういった偏見のない世界をこちら側に想像させる。過去と現在の時間軸としても分かりやすく良い演出だった。

人種差別問題が主なテーマだが、それ以上に、家族や兄弟愛や"誤解を解く方法"などを描いた巧みな作品だった。誤解を解くことや慣習を変えることは難しい。しかしこの映画では「ダニーのレポート」がそれを解決する糸口となり、今は変えられなかったが、いつかは変えられるという希望を持つラストへと繋がる。


『憎しみは耐えがたいほど重い荷物。怒りにまかせるには人生は短すぎる』
『我々は敵ではなく、友人である。敵になるな。激情におぼれて、愛情の絆を断ち切るな』
『仲良き時代の記憶をたぐりよせれば、良き友になれる日は再び巡ってくる』

この映画は人生の指針となる1本になった。
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