とにかく伊福部。最初から最後まで伊福部の音楽で満たされている。アメノヌボコに合わせて立ち上がる原始霧からはじまり、イザナミの子守唄、アメノウズメの舞踏、ヤマタノオロチとの対決、合唱で終わる音楽はトレモロありワルツもありで彼の音楽のエッセンスが凝縮されている。同じくロマン派の音楽を映画に仕立て上げたディズニーのファンタジアに双肩する作品だろう。
画も始終映画的で、天岩戸の前で人々が遠近を交代しながらスクリーンを舞う光景やヤマタノオロチが正面構図でとぐろを巻きながらスサノオを追う様子がとても楽しい。
脚本は基本的に古事記の母を訪ねて風読み替え。さすがに黄泉比良坂から語るわけにはいかないので童話のような形に収まったのだろうが、そのおかげで日本神話にしてはかなりわかりやすいつくりになっている。ただデフォルメするだけでもなく、天岩戸を開くときにアマテラスに鏡を見せる下りとかちょっとしたところで神話に忠実なのが面白い。