TaiRa

パプリカのTaiRaのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
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何となく観直してみたら割と見落としてた要素も多かった。ただ忘れてただけかもしれないけど。

今敏はよく分裂の話やってるけど、これはそれが色んな形で出て来る。学生時代に友人を裏切ってしまった刑事のトラウマと夢を用いたテロの話って別に関係ないんだけど、二つの人物/世界が統合されるか否かって部分で一緒に語られる。基本的に二つの物が両立する状態を是として、それを統合しようとする事を非とする。刑事は分身の様な友人の死に囚われていたが、自分の人生を肯定する事で友人の死から解放される。敦子/パプリカもどちらが主体かという話があるが、どちらも主体であるという形で落ち着く。敦子の抑制された感情がパプリカという形で発露していたので、その抑制された感情を敦子が認めるという事でまとまる。一方、悪役となる理事長は協力者の小山内の身体と一体化しようとするし、最終的には夢で現実を侵食してしまう。理事長がそれをする理由は、半身不随の身体を持つが故だし、しかも彼は同性愛者なので、世界を書き換えたい欲望が強いのも致し方ない。ただ彼の様な境遇でも、必要なのは自己肯定以外にないとする結論もそれなりに正しい。夢が夢を食う事で現実を救うという突拍子もないクライマックスは好き。妄想と現実の境界が崩れた人間の描写が流石上手くて、所長の混沌とした演説が始まる瞬間は何度観てもワクワクする。やっぱり自分は自分、現実は現実、夢は夢、映画は映画と線引き出来ないと人間終わりだと分かる。
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