「総天然色の青春グラフィクスや1億総プチブルを私が許さないことくらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ! 」
DCミニという、治療用に開発された夢の世界に入れる機械のお話。何者かに奪われ悪用されるDCミニ。夢はやがて増殖し、使用者の意識を蝕んでいく。現実と夢の区別がつかなくなっていく。そこに、千葉敦子や粉川さんのような主要人物の過去や自身とどう向き合うのかといったテーマも組み込まれている。
今敏、クスリやってんじゃねえのかってレベルで鬼才。まさに、あたおか作品。自由で不思議な夢の世界を、実に巧妙に映像化してみせた。これがいかに至難の業であるか。極めつけは狂気のパレードだろう。あれほどに強烈なインパクトのアニメーションを見たのは久々。理性などなく、本能だけで形成されたのがあの夢の集合体でありパレードなのだ!夢の世界は、現実逃避でもある。夢は全てが望み通りの理想の世界になる。それでも、自分の欲望に打ち勝ち、現実と向き合う事が出来れば一歩進める。人生とはその繰り返しなのです。一見、無茶苦茶やってみただけの変な映画に見えますが、それは何度も挟まれる支離滅裂な夢の世界によって分かりにくくなっているだけで、実際はストーリーも設定も映像もしっかりと作られた、アニメ映画版インセプションのようなもの。だから個人的には結構好き。
p.s.冒頭のローマの休日の終盤の再現シーン興奮したな〜!