アキラナウェイ

パプリカのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.0
今 敏(こん さとし)監督。
お恥ずかしながら、このお名前、何とお読みするのだろうというぐらい、存じ上げず。

何と、漫画家として大友克洋のアシスタントをされていたとの事。他にも、「老人Z」、「機動警察パトレイバー 2 the Movie」、大友監修のオムニバス作品「MEMORIES/彼女の想いで」にも関わっておられたとは。自分が昔通ってきたアニメ作品に関わっておられた事で一気に親近感アップ。

随分と前から「千年女優」や「東京ゴッドファーザーズ」、そして「パプリカ」の噂は耳にしていたものの、なかなか鑑賞機会に巡り会えず。

最近、「インセプション」を再鑑賞したのをきっかけに、こちらの「パプリカ」を。筒井康隆作の同名小説が原作。ジャケットのキャラクター、パプリカの内巻きの髪型が好きじゃないという理由だけで今まで観てこなかったというのは、ここだけの話。

千葉敦子は夢を共有できる装置"DCミニ"を使用し、夢の中で別人格「パプリカ」となって活躍するサイコセラピスト。ある日、研究所からDCミニが盗まれ、悪用される事件が発生。研究所内部の犯行と見て、捜査を開始する敦子と研究所の仲間達だが、事件の影響により夢が現実世界にも影響を及ぼし始める。

なるほど。
「インセプション」に影響を与えたという、夢の具現化という世界観。実写に比べ、映像表現の自由度は高い。

冒頭のサーカスのシーン。
「ターザン」や「ローマの休日」を彷彿とさせる、映画のワンシーン。そして、蛙や家電や人形やブリキのおもちゃの大行進。

目眩く展開される夢のシーンに一気に惹き込まれてしまう。

"DCミニ"の科学的見地による価値を難解な台詞で並べ立てたり、夢の中で語られる口上に癖があったりと、言葉巧みな脚本力にも魅了されっぱなし。リアリティを追求した画力も個人的には好み。

豪華声優陣の声の美しさにも耳が悦び悶える。
現実世界と夢世界の千葉敦子とパプリカの二役を演じた林原めぐみ、ビッグマックみたいな巨漢の時田には、甘めの軟弱男子らしく古谷徹、千葉敦子への偏愛ぶりを見せる部下の小山内守雄には我らが山ちゃんこと山寺宏一。

粉川刑事という、本当は映画が好きなのに、過去の因縁やらで拗らせてしまって映画が嫌いだと公言するキャラクターを通じて、映画への愛情を余す事なく描いている事も素晴らしい。

世界観もアニメーションとしての映像美も、十分好みではあるけど、風呂敷を広げまくって、悪の黒幕を巨大化させ、ただひたすら規模を大きく見せて、よく判らないまま全てを飲み込んで解決させようとする力技的なラストシークエンスはあまり好きじゃない。

それでも兎に角楽しめたのは事実。

今敏監督は、これが遺作となったそうな。
享年46歳。
出会うのが遅過ぎたけど、時を遡りながら彼の作品をまた拝見したいと思った次第です。