紅蓮亭血飛沫

unknown アンノウンの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

unknown アンノウン(2006年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

出口を閉ざされた廃工場にて、5人の男が目を覚ます。
しかも全員が記憶喪失であるものだから、それぞれが自分の正体について頭を悩ませ、自分も相手も信用出来ないといった負のスパイラルに陥ってしまう。
工場内を捜索する内に新聞を見つけ、我々の誰かが誘拐された実業家とその付き人である事、誘拐犯がこの中にいるのではないかという疑惑が浮かび上がる。
拍車をかけるように、誘拐犯と思われし男からの電話がかかってきて、日没にはこの工場に戻ってくるという知らせを受ける。
迫り来るタイムリミットまでに、彼ら5人は真実に辿り着き、生き残る事は出来るのか…。

“SAW”や“CUBE”のようなソリッド・シチュエーション作品として展開される本作。
まず第一に、こちらの興味を惹き付ける設定は中々良かったと思います。
5人全員が記憶喪失であり、廃工場内に閉じ込められているという緊迫した環境下。
自分の素性も分からないものですから、自分と同じ環境に立たされている4人に対しても警戒心を剥き出しにして言い争う、疑心暗鬼に陥る様はこのシチュエーションを一層搔き乱してくれる、活性剤になっていました。

ただ、この手の記憶喪失に苛まれる人物が記憶を取り戻す、その過程がただの偶然・不規則となっているのが勿体ない。
それこそ記憶喪失となった人物は、ストーリー通してその記憶に関連する出来事、引き金があったからこそ記憶を思い出す…といった一種のテンプレがあるものですが、本作の場合は時間が経ったから段々記憶が戻って来た、程度の描写となっています。
そのため、鑑賞していく毎に彼らの素性が明かされていく楽しみが乏しい。
こちら側に提供される彼らの断片的な記憶と、劇中内の一挙一動が積み重なって失われた真実に辿り着く…といった段階を踏んでいない。
最終的に彼らが勝手に記憶を取り戻し、今までの過程がほぼ意味を成していない、繋がっていない隠された真実を見せてくるわけですから、記憶喪失という要素が生み出す面白味を損なわせている、と感じられました。

最終的なネタ晴らしも同様です。
主人公ポシジョンに準じていた男と、彼を信用していた男の素性が明らかになるクライマックス(誘拐犯グループの一人と思いきやFBI捜査官、誘拐された実業家)も、その真実に直結する材料や布石が大して練られていなかったため、最後の最後に悪い意味での斜め上の真実を告げられても、こちらからしたら「じゃあ今まであれこれやってきたのは意味がなかった、というか後出しじゃんけんみたいじゃないか」と落胆してしまう。
この上、最後の最後にもう一つどんでん返しを引き起こすのですが、これもまた、やった意味があるのかどうか疑わしいぐらいにはあまり意味を成していない。
主人公と実業家の妻が裏で手を引いてました、というどんでん返しを、最後にぶつけてきた甲斐がほぼない。

宣伝でよくある“視聴者が驚く衝撃のラスト!”を露骨に取り入れたかのような、突貫工事っぷりを感じてしまったのが大きいですね。
それこそ“SAW”のラストみたいにこちら側の盲点を突いてきた、これまでのストーリー全部の辻褄が合ってしまう、という文字通りの天地返しをやったのならまだしも、最後の最後に脈絡もなく実はこうだったんだよ、と告げられても、必要性を感じられない刺身のツマ程度にしか認知出来ません。
興味を惹かれる設定、登場人物の試行錯誤を重視した疑心暗鬼の嵐は好みでしたが、もっとあれこれ練る必要性(ストーリーを通して真実に近付いていく手応えが乏しい)があったのは否めません。
ラストシーンの取って付けたような急ごしらえラストが大して意味を成していない、のも残念…。