クラムグラム

母なる証明のクラムグラムのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.5
母親とは子の幸せを願うものだ…などという生やさしいものではない「母親像」が描かれています。親子という結びつきはある種の呪いかもしれないとすら感じました。

作品全体に異様なリアルさが漂っていて、ジャンルとしてはサスペンスだと思うのですが随所に和製ホラーのような湿り気と緊張感があります。

個人的はこのリアリティの要因は2点あると考えます。
一つ目に、撮影・編集が最高峰の技術によるものとは言えない点。
イスラエルの音楽シーンは録音技術が未発達なことにより、ミュージシャンの泥臭い執念めいたものが伝わってくると評価されていました。この映画も同様で、映像が美麗すぎないことが、中流階級以下の登場人物達の生活に対する説得力を高めています。
二つ目に、役者が美男・美女でないこと。ストレートすぎる表現ですが、チンピラの男性くらいしかイケメンは出ません。腫れぼったい目、埃まみれな衣服、整髪料すらつけていない頭髪…私の地元かと思うくらい飾りっ気のない「田舎もん」だらけです。

普段意識に登らない「現実の構成要素」を集めて煮詰めて吐き出した様な舞台だからこそ、この映画が現実と地続きであるようなリアリティが生まれたのではないでしょうか。

一方でこのリアルさは地理的、文化的に韓国に近い日本人だからこそ真に感じ取れるものだとも思います。もっと言えば、日本人でも上位10%くらいの温室育ちの方には伝わらない魅力でしょう。その意味でも貴重で、面白い作品だと感じました。凡人で良かった。