KoMuto

母なる証明のKoMutoのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.4
プロット:9
映像:9
演技:9
演出/世界観:8
好み:9

一言:
初めて韓流映画観たけど、これはとても好み!
すんごい面白いかって言われるとそこまでは言えないけど、個人的に結構ハマった。

一言で言うと、リアリズムの鬼だった。作品を通じて、現実に対する非常に冷めた目線を感じた。物語慣れした視聴者のハイコンテクストな鑑賞を、現実の威力でとことんねじ伏せる筋書きになっている。事件の真相を文字に起こせば、平凡な町の普通な殺人事件。しかし、「事実は小説よりも奇ではなかった」を小説でやるとそれは「奇」なんだなー、と。観者が勝手に立てた仮説や妄想をブチ砕きまくってノーマルに徹することで逆説的に、ノーマルはアブノーマルに化けた。

例えば、DQNジンテを倒してカタルシスを生むゲームかと思ったらそんなお決まりではない。ジンテという人間も、法外な金は請求するけど、ある程度協力はしてくれる善人とも悪人とも言えないリアルな人間。金持ち弁護士はうざいと思いきや、言ってることはかなりまとも。終盤で、実は事件の黒幕には金持ちや政治家がいて大きな盛り上がりを見せるのかと装っておいて、そんなプリズンブレイクみたいなアツイ展開にはならない。ここで初めに出てきた教授たちとか弁護士とかをひっくり返すのかと思わせといて...
極め付けは主人公トジュンの生々しさ。大抵、愚鈍で可愛い知的障害者は善人(はたまた悪意なき罪人)として描かれるが、こいつ、普通にどろっとした人間である。都合の悪いことはしらばっくれて言わないし、案外自分のしたこととか周りの状況とか理解できてて、打算的に動いてる。

主人公と欲望を共有することで観者を盲目にするのはおきまりのパターン。

話のまとめ方もすごくうまい。冒頭は拠り所のない空想世界で、痛みを和らげるために踊り狂っている母の姿(=腿の鍼治療後の状態を象徴)→薬草切るところで本編スタート。これはどこか監督がメガホンを切る動作と似ている。終盤にまた薬草切って(メガホン切って)、今度は別の冤罪人が出るチャプターが始まる、という感じか。
バカって言われるとキレるとことか、辛い記憶をなくすツボとか、鼻血とか、細かい伏線もきちんと回収されている。

是非、Forrest GumpとかRain ManとかA Beautiful Mindとかを観てもらった後に、この作品をお勧めしたい。
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