クマヒロ

母なる証明のクマヒロのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.8
『未知の体感』

ポン・ジュノ監督はいつも新しい世界を、思いもよらない展開で見せてくれる。
「パラサイト」においても「グエムル」においても、一般的なジャンル映画とは違い、本作は特に顕著。

前半は「リチャード・ジュエル」的展開。
罪を被せられる知能が遅れた可愛い息子、息子のため奔走する母親。しかし、本作ではその2人に味方がいない。親子による親子のための物語である。
子が母をどう思い、母が子をどう思うのか。

風刺的なコメディと独特な会話劇、キャスティングの絶妙さはまさにポンジュノ。

そして、前半に散りばめられる印象的な小道具やちょっとした伏線。
ポケットから飛び出る針入れ、鼻血、栄養ドリンク。
各シーンの象徴的なアイテムとして現れ、作品としての魅力、無駄の無さを引き上げる。そんなとこもポン・ジュノ印。

後半の展開は想像もつかず、圧巻のラストが待ち受ける。
どこまで理解しているか、いつ思い出すか、曖昧で危険なトジュン。
もう消せないいくつもの過去。親子の関係。
太もものツボを刺し、狂ったように踊る姿を観ている時、何を思うか、観客に委ねる作品作りもやはり好感。
そして、何よりもこのラスト、他の作品では体感できない境地に連れて行かれる。

全体的に「パラサイト」より暗い雰囲気と曖昧なボーダーラインが目立つ作品で、それ自体を楽しむのだが、世界的評価という面では納得いくのは「パラサイト」。

「パラサイト」と対比して見る事によってポン監督が世界的監督になるべくしてなったことが分かる。

「パラサイト」も二回目を見たのでレビュー追加しました。
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