櫻イミト

パラダイス・ナウの櫻イミトのレビュー・感想・評価

パラダイス・ナウ(2005年製作の映画)
4.0
「オマールの壁」(2013)のパレスチナ人監督ハニ・アブ・アサドの出世作。イスラエルへの自爆攻撃に向かう幼馴染みのパレスチナ人青年二人を描く。フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ合作映画。ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞。パレスチナ解放人民戦線・日本赤軍の元メンバー足立正生監督推薦作の一本。

イスラエル軍に包囲されているパレスチナ自治区の貧民街。抑圧の中で生きてきたサイードとハーレドは反イスラエル派の自爆攻撃代表に選ばれる。ジハード(聖戦)による戦死はイスラム教の殉教であり天国に行けると言われるが、二人はそれぞれ葛藤する。。。

まずは自分の世界情勢への無知を反省。目を覚めさせられる一本だった。

“自爆攻撃”を実行する側の視点から描いている。肯定でも否定でもなく客観性を保とうとしている。武装闘争に反対し平和的解決を提案する女友達。一方、闘争リーダーは、大量の武器で弾圧してくるイスラエルに対し、何も持たざる我々が抗戦するには己の肉体を武器にするしかないと説く。

映画としてはシナリオも演出も良く出来ていてわかりやすい。アサド監督は北野武監督の「ソナチネ」(1993)から影響を受けたとの事。確かに死生観や男同士のつるみあいの描き方、セリフの間の取り方などにに似ているものを感じた。「日本のミニマリスト」というセリフもあり何か親近感を憶えた。終盤演出は1970年前後の若松孝二監督×足立正生による武装革命シリーズを連想させる。

思うところが沢山あり簡単にはまとめられないので、自分への宿題を挙げておく。
・これは戦争であり、“自爆テロ”という言い方はふさわしくないのでは?
・パレスチナによる自爆攻撃と神風特攻隊&人間魚雷の違い
・本作とヤクザ映画の心情の共通点
櫻イミト

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