そーた

パラダイス・ナウのそーたのレビュー・感想・評価

パラダイス・ナウ(2005年製作の映画)
3.5
爆発を表現する

普段、映画の爆発シーンを怖いとは感じません。
むしろ、アクション映画に至っては爆発シーンを期待して見ている。

でも、この映画の"爆発描写"。
本当に怖かった。
逃げ出してしまいそうでした。

自爆テロへ向かう二人の若者の物語。

ごく普通の青年二人が、テロの実行犯に指名されて何だか祭り上げられたあげく、腹に爆弾を巻き付けられて送り出されていきます。

その辺りのくだりが結構グダグダなんです。
当人達はいたって真剣なんだろうけど、テロリストが生み出されていく過程って案外あんな感じなのかもしれません。

というか、まっとうな思考力が備わっていれば民族や宗教の問題を深刻に真剣に考えて、よし爆弾テロだ!って結論には決してならないはずなんです。

それでも、テロが起きているという現実がある。

何も考えて無さそうな若者をつかまえてテロリストに仕立てあげていくシステムがある。
正常な思考が出来ないような状況下で、テロへとミスリードする。
それは別の言い方をすれば洗脳なんだと思います。

ただ、この映画ってテロリストの誕生過程をそこまでシリアスに描いていない。
だからこそ、日常化するテロをうまく表現している気がしました。

テロリストを育成する側にとれば実行犯を送り出してしまえればそれで良くて、あとは当人達が勝手に自己の行為を正当化して目的を達してくれるんだと思いました。

そうなんです。
この映画では、青年がテロへと目覚めていく過程が自発的で、そこからが本当の意味でシリアスなんですね。

その自己意識の欠如からの自発性の芽生えこそがテロの本当の恐ろしさなんではないか。
そんな事を感じてしまいました。

さて、冒頭で話した"爆発描写"。
これ、ちょっと語弊があります。

ただ、ネタバレしたくないんでこれ以上掘り下げませんが、正直怖かった。

爆発への恐怖、歪んだ憎しみの感情、テロの応酬に対する虚無感···
色んな感情が沸き上がって来ます。

今まで見たどんな爆発シーンよりも爆発のもたらす衝撃を感じてしまった。

その表現力。
素晴らしいけれど、とても怖い。

お願いします。
アクション映画では、是非やらないで下さい。
そーた

そーた