ろくすそるす

エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルスのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

 ハーマン・ヤオ監督による人肉ハオチー映画『八仙飯店之人肉饅頭』の主演俳優で送るパニック・サスペンスの傑作。
 物語は細菌パニックを軸に、「八仙飯店」のデラックスバージョンとも言うべきドロドロでとんでもないストーリーが紡がれてゆく。
 ボスの妻と密通したところを発見された部下のカイは、ボスに暴行され、ついに堪忍袋の緒が切れる。ボスをなぶり殺しにして、妻の舌を鋏で切った彼は娘リリーを襲おうとするが、彼女は難を逃れる。カイは台湾を去って逃亡。そのまま十年の歳月が流れる。
 その後、リリーは成人して警察となるのだが、偶然彼氏と一緒に旅行に訪れたアフリカで、不法入国して飯店で働くカイと覚しき人物と出会う。リリーが彼に気づいた理由が、遠い昔の記憶を呼び覚ます「血の匂い」がした、というただそれだけの理由というのもツッコミどころであったりする(「八仙飯店」では豚肉をぶつ切りにしていたのが、こちらでは蛙肉に置き換えられている)。
 飯店を経営する夫婦は、安値の豚をサバンナの部族からちょろまかしている。店主とともにアフリカの草原に向かったカイは、部族の間でエボラウイルスが流行っているのを知る由もなく、ウイルスで汚染された肉を仕入れてくる。その途中、原住民の女性を強姦したカイは、エボラに感染してしまう。
 しかし、カイは死なない。よりによって、エボラウイルスに特殊な抗体を持っている一万人に一人の人物だったのだ。
 気が狂ったカイは、守銭奴の店主夫婦を惨殺し、その肉でエボラウイルス入りの殺人「アフリカン<人肉>バーガー」を販売する。黄色人種を差別した白人たちに復讐するためだ。もはや、人肉饅頭のほどではない。旨そうにバーガーを平らげた老若男女が、次々と死んでゆく。こうして、エボラシンドロームはどんどん拡大していく。やがて、大金を手にしたカイは再び香港へとやってきて、街じゅうを地獄につき落としてゆく!
 こんなに無自覚に最強の殺人能力を手に入れた男が、かつてあっただろうか(笑)そこらじゅうに唾を吐いて、エボラウイルスをまき散らしながら大暴れするカイ。こいつこそ、映画史上「最悪・最強の悪役」の一人であることは確かだ。警察とのスリリングな対決シーンはもう見事。
 被害者女性であるリリーが、復讐の主軸に関わってくると思いきや、あまり活躍せず放置されて終わってしまうのが違和感が残るものの、それでもこの映画のパワフルさや壮大さは、決して損なわれない。あまりに怪物的な映画至上の問題作の一つ。