マルカマーク

の・ようなもののマルカマークのレビュー・感想・評価

の・ようなもの(1981年製作の映画)
3.7
「ボタンダウンシャツの似合うスタッフが、新しい笑いとニュアンスの映画を作りました」…みたいな文言が収録されていた予告編に出てたけど、当時は本当に若者が「ぼくたちの映画だ」って思ったのではないか。

意味がよくわからない映像の断片(プールに落っこちて、水面から上がってきた途端リンゴを出されてかじる…とか)がちりばめられていたが、そんな当時のナウさ、オシャレさが全編を通して存在している。
団地って超庶民的なものが出てきてもその世界に内包されて庶民臭さが消えてる感じ。

落語って当時は若者にも人気だったのかな。末広亭の深夜寄席のシーンで若いカップルが観に来てたけどあまり混んでなかったな。今は行列ができるけれど。

もう38年前の映画だけれどすごく今っぽい。東京の風景が古いのが逆に不自然に感じるくらいに。

主人公の志ん魚の俳優さんの目が印象的。あの上まぶたも下まぶたも二重みたいな目が好き。Kentのジャケットを誇らしげに着てるのも微笑ましい。
エリザベス役の秋吉久美子、どっか行っちゃいそうな浮遊した佇まいが魅力的。
でんでんと尾藤イサオ、若い!でも尾藤イサオってあんまり変わらないね。シティポップなテーマソングも歌ってた。
由美ちゃん役の子、めっちゃかわいい。
50sな格好でスクーターにまたがってたのが特にかわいい。
志ん菜くん、今存在しても全く違和感ない出で立ち。パーマがかった頭にメガネ、チェックシャツ…ってポパイのシティボーイみたい。志ん菜くんのお姉さんも今っぽい。2人がサラダ食べてるシーンがとてもオシャレ。

そのシーンの部屋にソニー・クラークのレコードが飾られてたけど、ちょこちょこレコードジャケットが出てくるのも音楽好きとしてはニンマリした。
エリザベスが水道水で歯ブラシを濡らしてるシーンで、YMOの「BGM」のジャケットを思い出していたら、引きの場面になった途端まさにそのジャケットが洗面所に飾られているのを発見したとき、パズルのピースがぴたっとハマった気持ちになった。
あと、志ん菜くんがクラフトワークのレコード買うって言ったり、あまり映ってなかったけど、ジャニス・ジョプリンのチープスリルのジャケットも出てきていた。
この時代、まさに若者だった母が羨ましくも感じた。

落語が会社みたく潰れるときは、日本も潰れてるだろうと最後らへんのシーンで志ん魚が言ってたけれど、落語も日本も潰れて欲しくないなぁー(軽め)。