Omizu

悲情城市のOmizuのレビュー・感想・評価

悲情城市(1989年製作の映画)
3.5
【第46回ヴェネツィア映画祭 金獅子賞】
ホウ・シャオシェンの代表作。シャオシェンによる台湾現代史三部作の第1部である。金馬奨では監督賞、男優賞を受賞、インディペンデント・スピリット賞では外国映画賞を受賞した。

思ったより『ゴッドファーザー』だった。日本統治から解放された台湾を舞台にヤクザ一家を、主に耳の聞こえない末っ子の視点から描いた大河ドラマ的作品。

長い!シャオシェンは『童年往事』しか観ていないけど、どちらも観終わってどっと疲れる。とにかく登場人物が多くて追うのが大変だった。

ヤクザ一家の親父と四人の息子、それだけでなくそれぞれの妻や抗争相手なども出てくるので相関図を見ながらじゃないと追えないくらい大変。

故に全てを理解できなかったが、とにかく長いという印象が残った。体感8時間くらいあったな・・・

引きの画だったり印象に残る撮影、この作品によって一躍観光地として人気が出た九扮のロケーションがよかった。どのシーンも画はバシッと決まっていた。

クオリティは高く、こちらに委ね説明しすぎない感じは流石ホウ・シャオシェン。その分、台湾の歴史や理解力が必要ではあるのだけど。

一番ハンデを負ったはずのトニー・レオン演じる四男が最終的には生き残る。トニー・レオンが香港人で、言語的に喋れなかったからそういう設定にしたそうだが、それが上手い具合に働いている。時折出てくる文字、そして耳が聞こえない=世の中の醜い部分から耳を塞ぐという暗喩にもなっていて象徴的だ。

面白くはないけど、台湾の歴史に対する知識、行間を読む力があれば楽しめる一作ではないだろうか。まさしく叙事詩であり、代表作と言われるのも納得のクオリティではあった。僕には合わないけど。
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