kanako

セカンドベスト/父を探す旅のkanakoのレビュー・感想・評価

3.8
あらすじは「心に傷を持つ10歳の少年を、ある独身男性が養子にしようとする中で、心を通わせていく物語」となる。
しかし、一人の人間について"心の傷"などという一言で説明できるわけでないことを、この作品は丁寧に描写している。
私が心を掴まれたのは、養子をとることに思い至った独身男性の"心の傷"だ。
10歳の少年の過酷な過去を慮り、自分の幼少期を「シミひとつない」と表現した男にも、無意識のうちに奥に追いやった"静かな深い傷"がある。

虐待やいじめ、トラウマになるような激しい体験は本人には避けようもない。一方的に負わされる激しい傷は存在する。
ただそれとは全く違うけれども、人は生きてゆく中で、静かに深く傷つくことがある。そして傷ついていることをしっかり自覚することもなく、少しずつ少しずつゆっくりと悲しみの沼にハマってしまうことがあるのではないか…そんなことを考えた作品だった。ウィリアム・ハートの演技がとても好きだ。
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