りん

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌のりんのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

十数年前、夏休みのうだるような暑さの中、おばあちゃんの家の2階にあるブラウン管のテレビでこの映画を見たことを、なぜか強烈に覚えている。内容はほとんど覚えていないけど、子どもの頃の原風景としてこの作品が刻み込まれている。高いところから白無垢姿の絵描きのお姉さんに手を振るまるちゃん、買い物ブギの極彩色と迫り来るようなハスキーな声色、静岡に住むまるちゃんの祖父母の家で飼育されている十姉妹…。

ちらちら浮かぶその画をもう一度観たく、大人になってからこの映画をまた観たいと思い何度も検索をかけた。しかし、円盤化しておらずたまにしかリバイバル上映も行われないため、なかなか観ることができずにいた。

今日ふとネトフリの画面で見つけた瞬間、あまりに興奮しすぎて思わず子どもの頃一緒にこの映画を観ていたであろう姉に連絡してしまった。(姉はこの映画のことを全く覚えていなかった。)興奮冷めやらぬまま速攻再生ボタンを押した。

久々に本作を観返したら、なんだかよく分からないところでじいんとしたり、涙が溢れたり、大袈裟に笑ったりしてしまった。

優しい担任の眼鏡の先生、まるちゃんの祖父母の温かさ、まるちゃんが絵を描くのも見るのも好きだと屈託なくお姉さんに伝えるところ、お姉さんと水族館に行くと言い出したときに同行すると申し出てくれるおじいちゃん、お姉さんにべったりなまる子を見て寂しがるお姉ちゃん(さきちゃん)、いつも変わらず個性的なクラスメイトとさくら家…。

子どもの頃に見た時は気づかなかったけどめんこい仔馬を万歳で戦地へ送ったひとたちと同じなんだよね、まるちゃん。お姉さんを新たな場所へ送り出すんだよね。悪いところに行くんじゃないんだから絶対に泣かない、と決めて笑顔で見送るまるちゃんの矜持に胸を打たれた。そのあと家で夜ご飯を食べながら笑顔でお姉さんの話をしていたら、堰を切るようにぼろぼろと涙を流してしまうまるちゃんと一緒にわんわん泣いた。まるちゃんの頭をそっと撫でてくれるさきちゃんの温かさ、何も言わずに見守る家族…。ああ、まるちゃんはまだ小学生なんだ、多くの大人に守られた存在なんだよね。いつも飄々として底抜けに明るくてふざけた表情をするまるちゃんの心の内が見えてどきっとした。こうして人は悲しみとか苦しみとか切なさとかそういう感情を重ねていっていつの間にか大人になっているのかもしれない。

めんこい仔馬のつまらない替え歌を本当の歌詞だと思い、当時の友人の前で自信満々に歌ってしまった友蔵のエピソードがあまりにもツボすぎて、しばらく笑いが止まらなかった。ちびまる子ちゃんによく登場するこのトラウマ描写が狂おしいほどに好き。当人からしたら思い出すだけで胃がキリキリするような事柄でも、他人からするととんでもなくくだらないため大笑いしてしまうという話題を生み出す塩梅が絶妙すぎる。


最後に、尊敬するhikoさんの本作品に関するブログエントリを貼っておきます。
https://hiko1985.hatenablog.com/entry/2022/07/05/180341
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