Haman

マリアの受難のHamanのレビュー・感想・評価

マリアの受難(1993年製作の映画)
4.3
鬱屈とした世界で孕み産み落とされた狂気。これがデビュー作なのは本当に頭がおかしい。

毎日時間に一寸の狂いなく夫のための家事をこなし半身不随の父親の在宅介護を行うマリア。産まれてから文字通りの箱入り娘として生きてきた彼女の精神崩壊。

やってること自体は団地妻AVみたいなものなんだけど、どこか違和感を感じる不穏さが妙に気持ち悪い。
日々の出来事を書き連ね誰に見せるでもなく棚の隙間に投函する手紙、家に出る何の変哲もない害虫たちの死骸収集、ヘソクリが隠してありマリアと精神的に繋がりのある人形。

向かいに住む男との触れ合いによって、生い立ちから過去として過ぎる受難を封印し忘れることで何とか保ってきたマリアの精神的平静が崩れ落ちる。
閉じ籠っていたものの解放は見ていて気持ち良いはずなのに、彼女のそれは人間離れした異常なものに映ってしまう。

男からの要求をただ受け入れるだけだったマリアの人生を初めて受け止めてくれた男、という終わり方がかなり素敵でちょっと泣いた。
Haman

Haman