半兵衛

めくらのお市物語 真っ赤な流れ鳥の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.0
座頭市を露骨に模倣した映画ではあるが、女性版市のお市を演じる松山容子の殺陣が結構上手いのと演出の面白さにより意外と面白く鑑賞することができた。

今回製作を担当しているのは後に必殺シリーズなどテレビ時代劇を多く手掛ける京都映画で、すでにこのときから他の撮影所よりもセットが狭いことを逆手に取りカメラや照明の変化によって映像に奥行きを出す手法が既に確立されている。ちなみに本作に関わっているスタッフの中にも何人か必殺に携わっている。また監督はかつて東映で様々なヒット作を手掛け一時期は巨匠扱いされていた松田定次監督(実はマキノ雅弘監督の異母兄)で、監督が得意とする細かいカット割で登場人物の感情の流れや殺陣を表現する演出が京都映画のスタイルと結構合っていて見ごたえがあった。

ただお市がいかにして剣士になったかだけではなく、ライバルの出現、かつての剣の師匠、自分を捨てた母親との再会、自分の祖父を殺した宿敵との決着と多すぎる伏線がごちゃまぜになり後半は渋滞していたのが残念。特に終盤5分の余裕が無さすぎる決着の付け方、そんなに時間がないのなら脚本からいらない要素減らせよと思ってしまう。

あと松山容子、盲人なのにあんな完璧なメイクしていいのかよ。

ちなみに母親に松山容子の話をしたところ大層懐かしがっていた、何でも子供時代テレビ時代劇のスターだったらしく結構人気があったとか。リアルタイム以降の人には『ボンカレー』の人というイメージしか湧かないが、そういう役者さんだったのね。ちなみに敵役として登場した天津敏も『隠密剣士』など黎明期のテレビ時代劇で悪役として出演して人気が出た俳優で、そういう意味ではテレビ時代劇が自分たちを格下に見ていた映画を席巻したとも言えなくもない。
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