浅丘ルリ子って、ほんとに歌が上手くて、キレイで、いるだけで画面が華やかになる。
画面に映った瞬間に、「あ、この映画のヒロインはこの人だな」っていう存在感。
自然と脳がそう認識する。
リリーは寅さんと一緒。旅をしながら唄を歌って生計を立ててる。寅さんには柴又に帰る家があるけれど、リリーにはない。
そんなリリーを、寅さんは「可哀想な女なんだよ」と仕切りに心配する。
たまに親に呼ばれてはお金を渡すリリー。
こんな女を親だと思いたくない。大嫌いだとはっきり言う。
泣き崩れる母親に言葉はかけない。振り返らずに立ち去る。リリーは強くたくましい。
でもね。嫌な事が重なって、もう全部が嫌になっちゃう時って、誰にだってあるよね。
唄っている最中に酔っ払いに絡まれたリリーはもう何もかも嫌んなっちゃう。
寅さんに一緒に旅に出ようって。寅さんも一生懸命なだめるけど、リリーはここで、寅さんには帰る家がある事で、どうせ私とは違うんだって、出て行ってしまう。
普通の人の暮らしが、所々、何回も出てくる。言葉は特にない。
別に、裕福な家族の生活でもない。
でもそれは、リリーや寅次郎からすると、全く贅沢で、お金じゃ買えなくて、たまらなく羨ましい。
そして、自分はそうはなれないとも、きっとどこかで思っている表情だったりする。
最後には、リリーは旦那さんを見つけて、寿司屋のおかみさんになる。
幸せいっぱいに、チャキチャキと働くリリーは、どこかトゲが抜けて、表情が柔らかい。子どものような笑顔だ。
リリーは幸せになる。